掲載日:2008年9月3日
推薦者:立花 浩司(SciencePortal 特派員)
タイトルにもある「クラウドソーシング」のクラウドとは、群衆(crowd)のこと。すなわち「クラウドソーシング」とは、不特定多数の人びと(群衆)に対してアウトソーシングを行うことを意味している。
本書の冒頭で「クラウドソーシング」の具体例として、モジラのファイアフォックスと呼ばれるオープンソースのウェブブラウザや、リナックスと呼ばれるオープンソースのOSを挙げる。これらは、いずれも不特定多数の「クラウド」によって短時間のうちに変更が行われ、バグが修正されてきていることで知られている。
日本よりもむしろ欧米で流行している、数字だけのパズル「数独」。数独の発明者は、鍛治真起という日本人だが、数独の専門雑誌『ニコリ』は、世界中の購読者が提供するアイディアをもとにつくられる。当の鍛治自身は、もっぱら数独を広める人として名をはせている。日本以外の国では数独を商標登録せず、よってロイヤルティ収入を受け取っていない。
彼のモチベーションは、数独を独占し、ロイヤルティ収入を得ることにあるのではなく、『ニコリ』の読者に共感し、十分理解することによって彼らが数独の考案に参加してくれることにあるのだ。
ビジネス活動にしろ、ビジネス以外の研究活動にしろ、グループの中でコミュニティに属し、機能的な役割を担う一方で、それ以外の個々の能力を発揮できずにいるケースは往々にしてあるものだ。本書では、高度に細分化され、縦割りになった機能的な集団に横串をさし、新たなコミュニティが出現することによって、イノベーティブかつ創造的な仕事が生まれ、自立した個人がお互いに洞察を提供し、経験やベストプラクティスを共有し分かち合うことができることを示している。
オンラインフォーラムやポッドキャスティング、リアルのイベントなどを通じ、4,000人もの著者によって編まれた本書自体、「クラウドソーシング」による成果物なのだ。サイエンスコミュニケーションにおいてもクラウドソーシング的なアプローチがもっとあってもいいと思うのは、きっと筆者一人だけではないはずだ。
| ISBN: |
ISBN978-4-86276-035-7 |
| 定 価: |
本体1,800円+税 |
| 著者: |
バリー・リバート、ジョン・スペクター、野津 智子 |
| 出版: |
英治出版 |
| 頁: |
192頁 |
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