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ホーム > 楽しむ科学 > 理科の探検 > 2011年9月7日「特集 自然エネルギー大国への転換を考える - 自然エネルギー(=再生可能エネルギー) 資源のABC」

理科の探検

"観る・知る・遊ぶ - 理科の楽しさを実感!!" をモットーに、理科の知識や実験・観察・ものづくりを紹介する月刊誌「RikaTan 理科の探検」の記事をご紹介します。

【 特集 自然エネルギー大国への転換を考える - 自然エネルギー(=再生可能エネルギー) 資源のABC 】

(掲載日:2011年9月7日)
左巻 健男 氏

現在、自然エネルギー(=再生可能なエネルギー)が、全体のエネルギー生産に占める割合は小さく、化石燃料などによるエネルギー生産手段に対する補助的な役割に留まっています。しかし、石油やウランなどのエネルギー資源の枯渇、地球温暖化の原因と考えられる二酸化炭素の放出の増大、原発事故などによる放射性物質の放出による環境への影響を考えると、エネルギー消費量の抑制、省エネルギー、電力資源の多様化・分散化などが必要になってきます。そのために自然エネルギー(=再生可能エネルギー)の短所を克服し、広く活用していくことを展望していかなければなりません。その展望を特集しますが、この解説はそのための入門編になります。


エネルギー資源のなかで電気エネルギーの利用が増加

産業、運輸や生活に役に立つエネルギーを作るために利用される資源をエネルギー資源といいます。自然界には、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料や、太陽からの光エネルギーなど、いろいろなエネルギー資源があります。私たちは、これらのエネルギー資源から、主として、化学エネルギーや電気エネルギーを取り出し、産業、運輸や生活の場で活用しています。


一次エネルギーと二次エネルギー

一次エネルギーとは、石油・天然ガス・石炭などの化石燃料、水力・太陽光・風力・地熱などの自然エネルギー(再生可能エネルギー)、原子力発電の燃料としてのウランなどです。日本に供給される一次エネルギーのうち、約47%は石油が占めています。1977 年の77%をピークに、次第に割合が減っていますが、依然として最大の割合をしめています。一次エネルギーは石油事業者や電力・ガス事業者などによりガソリンや灯油、電気、都市ガス等といった日常的に売買されている、使い勝手のよい二次エネルギーへと転換されて消費者のもとへ届けられ、使用されています。 とくに電気エネルギーは、送電線を使って離れた場にも供給でき、光や熟、運動エネルギーなど、他のエルギーへの変換が容易にできるので、家庭用や業務用を中心にその需要は増加しています。石油や石炭などの一次エネルギーは、その半分近くが二次エネルギーである電力に転換されます。一次エネルギー総供給のうち発電に用いられる割合(電力化率)は、1970 年度には27.8%であったものが、2006 年度では42.7%に達しています。発電の分野では、石油から原子力、石炭及び天然ガスへの代替が大きく進み、2009 年度では、原子力が25.5%、石炭が25.2%、天然ガスが28.4%と主力を占めています(図1)。

発電電力量の構成(2009年度)
資料:資源エネルギー庁「平成21年度電力供給計画の概要」
図1. 発電電力量の構成(2009年度)



自然エネルギー、再生可能エネルギー、新エネルギーとは?

自然エネルギーと再生可能エネルギーはほぼ同じ意味

「自然エネルギー」をその言葉通りに解釈すると、「自然の中に存在するエネルギー」ということになるでしょう。それなら、現在、使われているエネルギー資源は、すべて、化石燃料やウランでさえも「自然エネルギー」になってしまいます。

しかし一般的には、「自然エネルギー」は、水力・太陽光・風力・地熱などに限定しています。化石燃料が除かれるのは、消費が再生のスピードをはるかに超えているからです。石油はもともとが生物起源ですが、何百万年という時間をかけなければ再生可能ではありません。ウランは、使えばなくなってしまいますから除かれます。ということは、わが国で使用されている「自然エネルギー」は、自然の中に存在するエネルギーのなかで、自然の力で補充されて、長い年月使い続けてもなくならない(非枯渇性の)エネルギーです。これは、再生可能エネルギーそのものです。このようなエネルギーは、国際的には再生可能エネルギー(Renewable Energy)という用語が使われています。以後、本稿では再生可能エネルギーという言葉を使うことにします。なお、再生可能エネルギーは、正確には「再生可能エネルギー資源」です。以後、再生可能エネルギーという用語は、「再生可能エネルギー資源」の意味で使います。

もう一つ、再生可能エネルギーとしては、温室効果ガスの二酸化炭素を出さないことも重要です。産業革命以降の200 年ほどで、人類は動力や発電のエネルギー源として化石燃料を大量に消費し続けてきました。大気中の二酸化炭素の量は産業革命以前の13倍に増加し、これが温室効果ガスとしてはたらいて、地球温暖化の原因になっていると考えられているからです。

つまり、再生可能エネルギーには、
  • 自然の力で補充されて、長い年月使い続けても なくならない(非枯渇性)
  • 温室効果ガスの二酸化炭素を出さない
という条件があります。具体的には、水力・太陽光・風力・地熱・バイオマス(生物資源)・海洋がもつエネルギーなどがあります。


国の法律の中の「新エネルギー」という政策的用語

「新エネルギー」とは、自然のプロセス由来で絶えず補給される太陽、風力、バイオマス、地熱、水力などから生成される「再生可能エネルギー」のうち、技術的には導入段階にあるものの、コストが高いため、その普及のために支援を必要とするものを指します。日本の法律では「技術的に実用段階に達しつつあるが、経済性の面での制約から普及が十分でないもので、石油代替エネルギーの導入を図るために必要なもの」とされ、10種類が指定されています(新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法[略称:新エネ法])。

つまり、国の法律では、再生可能エネルギーは、大規模水力と地熱にプラスして新エネルギーがあることになります(図2)。

国の法律の中の再生可能エネルギー(大規模水力・地熱+新エネルギー)
    *1. 1000kW以下
    *2. バイナリー発電(低温の蒸気・熱水でも発電できる)に限る。一般的な地熱発電は含まない
図2. 国の法律の中の再生可能エネルギー(大規模水力・地熱+新エネルギー)


では、現在、発電電力量の中で、国の政策上の概念である新エネルギーは、どの程度の割合をしめるのでしょうか。

化石燃料のLNG(Liquefied Natural Gas、液化天然ガスの略でメタンを主成分)、石炭、石油などを筆頭に原子力、水力がほとんどを占め、新エネルギーなどはたったの1%にすぎません。


水力発電は再生可能エネルギーか?

国も法律では、水力発電は再生可能エネルギーに含めています。

ダムにたまった水は、川、湖、地面などにあった水が、太陽光のエネルギーを吸収し、蒸発して雲となり、それが雨となって降り注いだものです。したがって、水力発電に使われるダムの水の位置エネルギーは太陽光のエネルギーが変化したものということができます。水力発電は、非枯渇性ですし、二酸化炭素を出しませんから、それでよいかもしれません。

しかし、水力発電の設備建設や開発にともなう環境への影響を考慮してダム式の大規模水力発電は、再生可能エネルギーにいれないのが一般的です。つまり、水力発電としては、貯水ダムを作らない中小水力発電、マイクロ水力発電を再生可能エネルギーとするのが一般的です。本稿もその立場をとることにします。


主な再生可能エネルギーの仕組みと長所・短所

地球に降り注ぐ太陽光エネルギーの量は、1平方メートルあたり約1kW です。人類が消費しているエネルギー量は莫大ですが、それでも地球に降り注ぐ太陽光エネルギー量と比べれば、約1万分の1程度です。太陽光から受け取るエネルギーを1 時間分集めると、人類が1年間に使うエネルギーとほぼ同じ量になります。

そこで再生可能な太陽光エネルギーを風力も含めて何らかのかたちで利用することが期待されています(表1)。

水力発電、火力発電と原子力発電

現在、日本でおこなわれている主な発電方法は、水力発電、火力発電、原子力発電の3種類です。

ダムと水力発電、火力発電、原子力発電
ダムと水力発電 火力発電 原子力発電
図3. ダムと水力発電、火力発電、原子力発電


そこで、再生可能エネルギーによる発電を考えるときには、現在の発電の主力である水力発電、火力発電、原子力発電について、それらの概要を見ておく必要があります。それぞれ、水力、火力、原子力と、もととなるエネルギーは違いますが、最終的には水車やタービンを使って発電機を回転させて発電しています。できるだけ1か所で、たくさんの電気をつくり出すために、どの発電所でも大きな発電機で発電しています。

表1. 主な再生可能エネルギーの仕組みと長所・短所
発電区分 仕組み 長所 短所 主な課題
太陽光発電 ・太陽の光エネルギーを太陽電池(シリコン半導体など)で直接電気に変換して発電
・光エネルギーの10-25%を電気エネルギーに変換可能
・モジュール形式で、家庭から事業所利用まで対応可能
・発電時に二酸化炭素の発生なし
・天候や太陽高度に日射量が左右され発電量が変動
・発電コストが化石燃料と比べ割高
・太陽電池のエネルギー変換効率の向上
・低コスト化
風力発電 ・風の力で風車を回し発電 ・風車の規模や基数によって、家庭から事業所利用まで対応可能
・発電時に二酸化炭素の発生なし
・騒音や鳥が衝突など環境への影響の可能性
・風速変化による発電量の変動が急で変動幅が大(日本は欧米に比べ風向や風速の変化が大)
・発電コストが化石燃料に比べ割高
・日本の風況に応じた発電効率の向上
・低コスト化
・発電量の急変に対応可能な電力系統の強化
地熱発電 地熱(地球内部の高温のマグマの熱)で加熱された高温の熱水のたまった場所から井戸で蒸気を取り出しタービンを回して発電 ・火山国日本では潜在的な量が豊富
・発電量が安定
・発電時に二酸化炭素の発生なし
・適切な熱源を掘り当てるための開発リスク大
・地下の熱水くみ上げの環境影響の可能性
・適地が国立公園などに多く、新たな電源開発が困難
・開発リスクの低減など低コスト化
・環境影響への周辺住民の理解獲得(なお、発電や温泉だけではなく、冷暖房、養殖、温室、融雪などさまざまな用途に利用可能)
中小水力発電 ・落差のある河川、用水路の水流で水車を回して発電 ・大規模ダムを利用した発電と比べて環境影響が小さい
・発電時に二酸化炭素の発生なし
・中小あるいはごく小さい水流では発電量が不安定
・発電時に二酸化炭素の発生なし
・低コスト化
バイオマス発電 ・薪、炭、廃木材などの直接燃焼
・家畜の糞尿、食品廃棄物、栽培植物の発酵による燃料(メタンやアルコール)の生成(もともとは生物[バイオ]の量[マス]のこと)
・植物バイオマスは育成時に二酸化炭素が取り込まれるので(炭素固定)、取り込まれる量以下の利用ならば二酸化炭素の新たな発生量なし ・バイオマス資源の存在は薄く広い
・エネルギー発生までのコストが化石燃料に比べて割高
・バイオマス資源の効率的な収集
・輸送
・発酵後の残滓(ざんし)処理方法の確立
・低コスト化


それぞれの発電の仕組みや特徴、問題点などは表2のようにまとめることができます。

表2. 水力発電、火力発電と原子力発電の仕組み、長所、短所
発電区分 仕組み 長所 短所
水力発電 ・高い位置にあるダムに水をため、それを流すことで、水の位置エネルギーを運動エネルギーに換えてタービンを回して発電(日本ではすでに多くの水力発電のダムが作られている) ・発電によって有毒な廃棄物を生じることはない
・二酸化炭素などの気体の発生が少ない
・熱エネルギーを経ないため、エネルギー変換効率が80%と高い
・ダムをつくるのに適した地形には限りがある
・ダムをつくるとき、山を削り上流の川沿いを水没させるので、自然環境に影響をおよぼす
火力発電 ・石油、石炭や天然ガスを燃やして水を加熱し、高温・高圧の水蒸気を発生させ、タービンを回して発電(タンカーで運んできた石油を発電に使うことが多く、発電所は主に海岸に建てられる) ・石油、石炭、天然ガスともに発熱量が大きい
・高温のガスタービンと低温の蒸気タービンを組み合わせることで、50%をこえるエネルギー変換効率のものもある
・燃焼によって発生する有毒な二酸化硫黄や二酸化窒素などはかなり除去できるようになっているものの、二酸化炭素が大量に発生
・化石燃料の埋蔵量に限りがある
原子力発電 ・ウランなどで核分裂反応が起きるときの熱で水を加熱し高温・高圧の水蒸気を発生させ、タービンを回して発電
・エネルギーの変換効率は30〜35%程度と低い
・タービンを回した水蒸気は冷却して、また圧力容器にもどすが、そのときに冷却のため多量の水を使用するので、日本では海岸に建設
・少量の燃料で莫大なエネルギーを得ることができる
・運転時に二酸化炭素を出さない
・放射性物質が外に出ないようにするため、安全のために多くの防護策をとり、常に厳しく監視する必要がある
・ウランの埋蔵量に限りがある
・使用済み核燃料・廃炉の安全な処理が難しい
・いったん事故を起こすと危険な放射性物質がまき散らされることがある


現在、再生可能エネルギーに注目が集まるのは、まず東電福島第一原発の事故により、原発が深刻な事故の危険性を抱え、潜在的な不安定性をもっていることが浮き彫りにされました。また、原発は「トイレ無きマンション」といわれるように、放射性廃棄物を未来に残すことが明瞭になってきたからです。

天然ガス、石炭、石油などの化石燃料は日本にはほとんどなく、輸入に頼っています。化石燃料は、二酸化炭素排出量が多いエネルギーです。

そこでエネルギー消費量全体の中で、再生可能エネルギーを積極的に導入していこうという機運が出てきています。再生可能エネルギーは、二酸化炭素排出量が少なく、輸入に頼らない国産エネルギーとして、さらに導入が求められています。

しかし、再生可能エネルギーには今のところ、高コストである、自然条件に左右されやすい不安定性をもつ、適用場所は広いがエネルギー密度が薄く小規模であることなどのデメリットもあります。

日本は、この分野では技術的に高い能力をもっています。さらに積極的な技術開発をして、導入を広げる取り組みが必要でしょう。


揺らいだ発電方法別の発電単価

資源エネルギー庁は2005 年に1kW時(キロワット時)あたりの発電単価を「原子力5.9 円、LNG 火力6.4 円、石炭火力6.5 円、石油火力10.2 円、水力13. 6 円」とモデル試算しています。

この値は、設備費や燃料代などから試算したものということですが、原子力が低く、水力が高いのに疑問が生じます。なぜなら原発は多くの国がその経済性から新規に建てられないなどの現実があるからです。

立命館大学国際関係学部の大島堅一教授は、電力各社の有価証券報告書を元に発電コストを検証、試算しました。その結果、原子力と揚水を足したコストは2007年度で1kW時約9円と、国の試算の約2倍であり、火力の約11円とほぼ同じであることが判明したのです。揚水発電とは、原発はつねに一定の出力で発電するため、夜間電力で下のダムから水をくみ上げて上部調整池にためておき、需要の多い昼間に落水して発電するものです。これは原発のために存在する発電で、いわば夜間電力の「蓄電所」です。

この揚水発電を水力から除くと、水力の発電単価は約4円でもっとも安くなります。

元々の国の試算では、原発では、発電にともなって出る使用済み燃料を再加工したり、廃棄物を処理する費用(バックエンド費用)を過少に見積もり、原発を誘致した地元自治体に対する補助金や交付金(立地費用)は含めていません。国の試算はいいかげんだったのです。

長いスパンで見れば再生可能エネルギーは、積極的な技術開発や、その広い普及の中で、もっとも発電単価が安いエネルギーになる可能性があります。


循環型社会へ向けて

最後に、私も編集委員・執筆者である検定中学校理科教科書『新編 新しい科学1 下』(東京書籍2006年2月発行)のコラム「科学のとびら」(101ページ)の文章を紹介して本稿を閉じたいと思います。この教科書は現行教育課程のものです。来年4月からは改訂教育課程に移り、この教科書ではなく新教科書になりますが、中学生だけではなく、大人もこの趣旨を理解しておくことが必要ではないでしょうか。

「わたしたちが、限りあるエネルギー資源と物質資源を使いつくしてしまったあとでは、現在と同じような生活や文明は、もはや不可能なのでしょうか。エネルギー消費や資源の利用のしかたが今と同じままであれば、そうなってしまうでしょう。それでは、人類はどのような方向を目指していくべきでしょうか。

わたしたちが利用するエネルギーの効率を向上させ、一方で再生可能なエネルギーの利用の割合を高めていけば、エネルギー資源が枯渇することはさけられます。また、物質資源が完全に循環して利用されるようになれば、たとえ新たな物質資源が得られなくても、困ることはありません。

このような状態が達成されたときに、人類は初めて永続的な文明の土台を築くことができるようになります。このような社会を、持続可能な社会といいます。

持続可能な社会を実現するのは科学技術の役割であり、わたしたちが科学を学ぶ大きな意義も、そこにあります。

左巻 健男(さまき たけお) 氏プロフィール
法政大学生命科学部環境応用化学科教授。6月末に出した新潮ムック『大災害の理科知識Q&A250』がわかりやすいと好評です。専門の理科教育を土台に一般への科学コミュニケーションも進めています。


Rikatan 9月号 より転載

Rikatan 9月号 【りかたん】とは?

「観る・知る・遊ぶ・理科と自然の楽しさを実感!」をモットーとする理科大好きな企画委員たちがメーリングリストで意見を出しあってつくっている雑誌です。理科の楽しさを皆さんにお伝えしていきます。

2011年9月号は、特集「自然エネルギー大国への転換を考える」を組みました。
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