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ホーム > ニュース > レビュー > 2010年3月5日「サービスイノベーションが最も急がれるのは」


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【2010年3月5日 サービスイノベーションが最も急がれるのは 】 コメントを投稿する

診断所見を取り違えてパソコンに打ち込んだため別人に前立腺除去手術をしてしまったり、看護師が看護記録に意図的に虚偽の記載をした疑いで逮捕されるといったニュースが続いている。こうしたニュースに触れて、思った人はいないだろうか。医療分野こそ、サービスイノベーションが最も期待され、またその効果も非常に大きいのではないだろうか、と。

3日、内閣府経済社会総合研究所主催のシンポジウム「次代の社会・経済・科学技術政策-サービス・イノベーションは日本経済を救う救世主になるか-」が都内で開かれた。そこで東京大学政策ビジョン研究センターの秋山昌範教授が、安全安心という観点からも医療分野のサービス・イノベーションが大きな意義があることを強調している。

秋山氏は、国立国際医療センターに勤務していた時、氏自身が中心になり企業も巻き込んで画期的な医療情報システムをつくりあげたことで知られる。「医療現場で発生した正確な診療情報を記録し、直接診療目的以外の二次利用も可能」というITをフルに利用したシステムだ。医薬品の在庫管理から病院の戦略を決定する基礎データの提供など経営改善に役立っているだけでなく、患者中心の医療体制へという業務改善にも効果を挙げているという。看護師が意図的、あるいは間違って看護記録にうその記載をするなどといった行為は全く、あるいはほとんど防ぐことができるらしい。

問題は、どこでも簡単にこうしたシステムを導入できるかである。秋山氏は「たまたま医師になったが物理も数学もさらに法律も好きだった」という。ソフトウェアの設計図にあたるソースコードも自ら作成したという氏のような人がいなければ、システムの実現はあり得なかっただろう。注射という行為だけで128もの区分けが必要で、このデータだけで700万件になるというのだ。氏によると、こうしたシステムをつくるには数学が必須で、さらに心理学も必要という。ここで言う心理学は米国流の心理学で、モデル化という手法が重視される。システムの設計に当たっては医療現場のフローを分析しなければならないが、医療現場の人は数学が苦手で、モデル化も得意でない。研究室にいる研究者が医療の現場に行って一緒につくることが肝心だ、と氏は言っていた。

サービスイノベーションあるいはサービス工学という言葉はあちこちで見聞きするようになっている。当サイトに昨年3月掲載された寄稿記事「生活者起点のサービスイノベーション」で筆者の碓井 誠 氏(フューチャーアーキテクト株式会社 取締役副社長)は次のように言っている。

「サービスとは人・物・金・情報を対象とし、これらを目的に応じて取り扱うに当たり、その支援とこれに伴う付加価値を提供する機能であり、経済の対象、なかんずく産業の生産性として語られるのではなく、社会的価値実現の営みであり、生産性は企業でなく社会の生産性としてとらえるべきだ」

ところが、これまではそうでなかった、と氏はいう。どうあるべきなのか。

「これまでサービスを考える視座は、工業化社会の延長であり、サービス提供者とサービス受給者の一方向の関係でデザインされていた。これからは産業分類や行政機能の縦割りの構造を超えて、生活者の視座でデザインされるべきである」

碓井氏の主張は、コンビニ業界で世界でも通用するサービスイノベーションを成し遂げた実績に基づいている。コンビニの便利さは多くの人が認めるところだろう。医療界で秋山氏が先鞭(せんべん)をつけたサービスイノベーションが、氏が望むように「一般化」した場合の日本社会に与える恩恵は格段に大きいと思われる。果たしてすんなりと進むだろうか。

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