掲載日:2007年7月13日 京都工芸繊維大学と水谷ペイント株式会社は、ナノレベルで分散したコロイド状シリカの分散安定性を飛躍的に向上させたナノコンポジッドエマルションの商業生産化に世界で初めて成功し、さらにこのナノコンポジットエマルションを応用展開して、高度耐汚染性の特徴を持ち、かつ環境負荷の少ない外壁用塗料として、企業化しました。ナノコンポジットエマルションは、無機質の不活性さと有機質のフレキシブル性を併せ持つ独創的なハイブリッド材料として以前から報告されていましたが、合成法、コスト、フィルム物性等の問題からこれまで実用化されていませんでした。一方建築用塗料に対して、環境対応、塗膜の高機能化が強く求められている現状で、ナノコンポジットエマルションのような新規材料が有する潜在的な性能への期待は高く、高機能素材として早期開発が望まれていました。
本技術は、コロイダルシリカが20〜30nMの粒子径で安定して分散しているナノコンポジットエマルションのシンプルな合成法と、本ナノコンポジットエマルションを応用展開した新規水性外壁用塗料の開発に関しています。ナノコンポジットエマルションの新規合成法を検討する過程で、シリカ粒子の存在下、曇点以上の温度でノニオン系界面活性剤を使用すると、通常凝集沈殿する界面活性剤が、シリカの周りに吸着し、アクリルモノマーの重合の場として応用できる可能性を発見しました。本発見により、ナノ分散しているシリカ粒子をアクリル樹脂で被覆した50〜60nmのハイブリッドエマルション(図1)をシンプルな合成法で低コストかつ簡便に合成可能となり、透明性、機械強度、耐熱性に優れた新規塗料用ナノコンポジットエマルションの開発に成功しました。
| ナノコンポジットエマルション |
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| 図1. ナノコンポジットエマルション(NCE)のTEM観察 |
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図2. 塗膜耐汚染性向上の仕組み |
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| 地球温暖化対策 |
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| 図3. 塗料中の組成物比較 |
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図4.耐汚染性実例 |
本研究を基に、開発企業ではエマルション塗料の欠点である汚れやすさを大きく改良した外壁用高度耐汚染性塗料を開発しました。本開発ナノコンポジットエマルションは微細粒径のシリカを多量に含有しているシリカ表面がポリマーコーティングされているために、シリカ粒子の均一分散が達成され、成膜後のフィルムへの汚れ(砂ぼこり等の固体粒子の周りに大気中のばい煙、排気ガス等の油成分が付着したもの)の進入をブロックしています(図2)。ナノコンポジットエマルションを活用した開発製品は、環境負荷低減を図る水性塗料であると共に無機・有機ハイブリッド型組成物として、均一に分散された多量のコロイダルシリカがポリマー鎖との相互作用で強靱なマトリック構造を発現する事から、従来品よりも優れた機械的強度を有し、かつ無機塗料的耐熱性を併せ持つ特性を保持しています。
地球温暖化対策及び有限な石油系資源に極力頼らない塗料として、石油系資源の低減(従来型溶剤系塗料の80%、従来型エマルション塗料の50%が低減)が達成されている本開発品(図3)は、地球環境の維持向上にも貢献する製品です。本開発で合成された組成物は、今後塗料用途以外への展開も可能で、海外からも技術提携の引き合いが寄せられています。
本成果は京都工芸繊維大学で得られた基礎的な成果を元にした水谷ペイント株式会社との産学連携研究が実を結んだものであり、本成果の一部は科学技術振興機構(JST)の独創的研究成果育成事業、研究成果最適移転事業に採択され、事業化へ向けての検討を行なった結果です。
本技術の詳細は、Journal of Applied Polymer Science ,Vol ,99,pp659-669(2006))に掲載されています。
本技術は、わが国科学技術の進展に寄与し、経済の発展に貢献した優れた大学・研究機関発の実用化技術として、第32回井上春成賞を受賞しました。
水谷ペイント株式会社のホームページ
井上春成賞のホームページ |